分散型金融の研究機関である株式会社Next Finance Tech(本社:東京都渋谷区、代表取締役:徳力創一朗、土田真也)は、香港科技大学の青柳潤助理教授、川口康平助理教授と分散型金融に関する共同研究の実施を開始したことをお知らせします。
背景
ブロックチェーン技術を用いた分散型金融が、次世代の金融として注目されています。しかし、実際の適用例は限られており、法整備や安全性、利用者の知識不足など、多くの課題があります。
本共同研究では、これらの課題の解決に寄与することを目的としています。同社のオンチェーンデータ分析と分散型金融知識、同大学研究チームの伝統的ファイナンス分野の知見を組み合わせ、共同研究を進めます。
分散型金融は、2021年のDeFiサマーで多くの利用者を獲得しましたが、多くの課題も見つかりました。国際的には、香港科技大学[1]、オックスフォード・マン定量ファイナンス研究所[2]、コロンビア大学[3]、チューリッヒ工科大学[4]などの研究機関が本分野において研究を進めています。さらなる体系的なアカデミックな基礎研究が求められており、我々研究チームも業界の発展に寄与して参ります。
分散型金融・分散型交換所とは?
分散型金融とは、ブロックチェーン上の金融アプリケーションの総称です。暗号資産の決済機能(送金・残高確認など)を有するブロックチェーン上でスマートコントラクト技術(用途に応じた処理を動作させる技術)を活用した様々な金融サービスのことを指します。
分散型交換所とは、ブロックチェーンとスマートコントラクトで取引が管理される、中央機関を介さない取引システムです。分散型交換所での取引は、スマートコントラクトにより自動で執行され、オーダーブック型の注文の様に個々の売買注文を一致させる必要はなく、流動性提供者から集めた流動性を用い、暗号通貨間の取引を行います。
研究テーマ
分散型金融アプリケーションにおいて最大の分散型交換所であるUniswap v3は、利用者に低スリッページの交換機能を提供していますが、流動性提供者に多くの運用コストを要求するという問題があります。
Uniswap v3では同一の取引通貨ペアに対して複数の手数料プールが用意されており、流動性供給者はマーケット状況に応じて手数料を選択することが可能となっています。しかし、手数料プールの変更は容易でなく、また、価格変動時のインパーマネントロスによる損失が収益を圧迫し、純損失が生じることも少なくありません。この環境では流動性供給の魅力が低下し利用者が減少、さらに流動性供給のインセンティブも低下するという悪循環が生じます。
そこで我々はこれらの課題を解決すべく、分散型交換所システムの定式化と課題の整理、及びサステイナブルな交換所システムのモデル構築に取り組みます。具体的には、既存の分散型交換所モデルを定式化し、エコシステム上の課題を整理し、取引手数料や流動性提供者へのインセンティブ構造などを考慮したモデルの構築と実用性検証を行います。これらの研究を通し、分散型交換所の持続的発展と利用者利益の最大化を目指します。
香港科技大学について
同大学は、香港の経済と社会を更に発展させることを使命として1991年に設立された研究志向の総合大学です。Times Higher Educationのアジア大学ランキングでは7位に位置しており、その名の示す通り科学と技術にまたがる分野で国際的知名度を誇るのみならず、ビジネス&マネジメントの分野でも、グローバルEMBAランキング世界1位(Financial Times EMBA Rankings, 2022)、ビジネススクール研究ランキングアジア一位(University of Texas at Dallas Top 100 Business School Research Rankings 2023)に位置するなど、地域を代表する研究機関とみなされています。
香港科技大学 川口康平助理教授 コメント
分散型金融の分野では、日々様々な新しいサービスが登場しています。これらのサービスがどのように機能し、どのような社会的利益を提供しているか、またどのような問題を抱え、どのような解決策が必要とされているかを分析することは、学術的にも刺激的な課題であり、また実務上も非常に重要です。Next Finance Techさんのように、分散型金融に関する高度な専門知識を持つサービス提供者と共同で、このような研究を進めることは貴重な機会です。この分野の進歩に少しでも貢献できるよう、精一杯取り組んでいきたいと考えています。
香港科技大学 青柳潤助理教授 コメント
分散型金融システムの理論と実証に焦点を当てた当研究は、金融世界の未来に対する洞察を提供するものとなります。既存の金融システムは複雑に規制され、理論的アプローチでは捉えきれない側面も存在し、データからは人々の行動が明示されにくい場合もあります。一方、分散型金融システムは未だ多くが規制されておらず、利用者がオープンソースな形でシステムを形作り、進化させることが可能です。Next Finance Tech様との協力を通して、分散型金融システムの魅力的な側面を深掘りし、どのような新しい経済が生み出されるのか等、新たな洞察を提供できることを楽しみにしています。
弊社共同創業者 徳力・土田 コメント
歴史と伝統のあるアジア有数の大学とこのような共同研究の機会を頂けたことに社員一同非常にワクワクしております。特にあらゆる分散型交換所(DEX)の根幹をなす流動性供給の仕組みに関しては、弊社としては中長期的に研究すべき重要な課題と認識しております。アカデミアの観点からの研究は国内外を見てもまだまだ数が少ないこの分野ですが、香港科技大学さんと弊社が第一人者として道を切り開いていく所存です。
参考文献
[1] Aoyagi, J., & Ito, Y. (2021). Coexisting Exchange Platforms: Limit Order Books and Automated Market Makers (SSRN Scholarly Paper 3808755). https://doi.org/10.2139/ssrn.3808755
[2] Cartea, Á., Drissi, F., & Monga, M. (2022). Decentralised Finance and Automated Market Making: Execution and Speculation. SSRN Electronic Journal. https://doi.org/10.2139/ssrn.4144743
[3] Milionis, J., Moallemi, C. C., & Roughgarden, T. (2023). Complexity-Approximation Trade-offs in Exchange Mechanisms: AMMs vs. LOBs (arXiv:2302.11652). arXiv. https://doi.org/10.48550/arXiv.2302.11652
[4] Heimbach, L., Schertenleib, E., & Wattenhofer, R. (2022). Risks and Returns of Uniswap V3 Liquidity Providers. Proceedings of the 4th ACM Conference on Advances in Financial Technologies, 89–101. https://doi.org/10.1145/3558535.3559772
弊社概要
株式会社Next Finance Techは、分散型金融の研究機関としてブロックチェーンやプロトコルの定性的・定量的な分析をもとに、分散型金融を用いた運用事業、分散型金融に関するリサーチ事業、分散型金融に関する運用管理システム開発事業を展開するスタートアップです。
会社名 | 株式会社Next Finance Tech |
本社所在地 | 東京都渋谷区神宮前2-12-1 ウェールビル4階 |
役員数 | 31人(業務委託等を含む) |
顧問弁護士事務所 | アンダーソン・毛利・友常法律事務所、S&W国際法律事務所 |
顧問税理士事務所 | ゼロス税理士法人 |
お問い合わせ | support@nxt-fintech.com |
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